DIC川村記念美術館に行ってきた

DIC川村記念美術館

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昨日は天気がよかったので千葉県佐倉市にある川村記念美術館に行ってきた。
電車に揺られて1時間半。さらに送迎バスで進むこと20分。バスの中で他の乗客たちに連帯感を(勝手に)抱きながら、コンビニで買ったおにぎりを頬張ったり、竹林なんて初めて見るなあと思ったりしてるうちに美術館に到着した。
実は以前からここにあるマーク・ロスコの部屋に行きたかったのだ。


マーク・ロスコについては以前から惹かれるものがあったのでよく本やネットで作品を見ていた。でもやっぱりロスコの絵は実物を鑑賞してこそ。だって実物は幅4メートルを超す巨大な作品なんだから。そもそも作品の飾ってある空間ごと鑑賞することを狙って描かれたものなんだから。

で、見てきたわけだがこれはもちろん予想通り素晴らしいものだった。
ロスコの絵を見ていると、理性を飛び越えて直接感情に作用してくるように感じる。というかそもそも「見るもの」と「見られるもの」という近代以前の絵画にあった前提がなくなっていて、見るというより作品と一体になると言ったほうがいいかもしれない。


とりあえず目的は達成されたのだけど、そのあとに鑑賞したフランク・ステラの作品群にはもっと圧倒された。なんでも川村記念美術館フランク・ステラの世界的なコレクションでも有名なのだとか。知らんかった。線や形や色が、そのエネルギーの赴くままにキャンパスを超えて描かれている作品群にとにかく打ちのめされて、ステラの作品ばかり何度もぐるぐると見て回った。2度目に来るときはこちらをメインにしてもいい。


そしてさらにその後見た企画展も良かった。この展覧会を企画した人はとてもセンスがいい。
内容は日本で活躍する現代美術作家7人を紹介するというものだったのだけど、たぶんそれだけなら見ようとは思わなかっただろうな。「抽象と形態」と題してこの7人とともに彼らに影響を与えたピカソやモネやブラックら西洋絵画の巨匠たちをところどころに配置して、ポスターにも7人の名前と並列して名前を並べている。巨匠の作品があるとなれば見てみようかなと思うのがミーハーな人間の心情というもの。だがこれが思わぬ収穫だった。

現代美術というと身構えてしまうけれど、内容は結構わかりやすいものだったと思う。
特にポスターにも描かれていた五木田智央という人の作品には驚いた。会場に入ると一番最初に目にするところに置かれたその巨大な絵は、遠くからだと顔をえぐられたような女性が描かれた写実的でショッキングな絵に見えるんだけども、近寄るとむらのある絵の具でテキトーにべたっと塗ったようにしか見えないのだ。何度も近づいたり遠ざかったりして、ゲシュタルトが崩壊する瞬間を体験するのが楽しい。

赤塚祐二という人の作品もそんな絵だった。近くで見るとなにやら形のわからない抽象的なものに見えるけど、離れて見るとふわっと全体像がはっきりしてくる。なるほど確かに記憶というのはそんなものかもしれない。全体像ははっきりとした確信があるのに、細部まで思い出そうとすると全然覚えていないことが多い。


というわけでロスコを見るつもりで全部楽しんでしまったのだが、とにかくこの川村記念美術館、一度は訪れてみる価値がある。レンブラントルノワールやピカソやブラックなどメジャーな画家の作品も多いし、ロスコやステラやニューマン、マレーヴィチアルバースなど抽象画の巨匠たちのコレクションがこれだけ一緒に見れるのはすごい。(しかもロスコやニューマンはそれぞれに特別な部屋まで設けられている!)コレクションの質が非常に高いのだ。アート好きの人たちからの評価が高いのもうなずける。